鎌倉画廊鎌倉画廊では、銅版画家・坪内好子による個展「時間の集積から生まれる存在感」を開催いたします。
東京生まれの坪内は、女子美術大学で版画を学び、その後スロヴァキアのブラチスラヴァ美術アカデミーに留学し、版画家ドゥーシャン・カーライに師事しました。エッチングやアクアチントを基盤とした銅版画に金箔や手彩色を組み合わせる独自の技法により、幻想的で詩情に満ちた世界を創出してきました。作品はロサンゼルス・カウンティ美術館や黒部市美術館などに収蔵されています。
坪内の作品において中心となるテーマは「時間」です。金箔を押した紙に複数の版を重ねて刷ることで、箔が剥離しながら複雑な質感を生み出し、まるで長い時間の堆積によって風化したかのような表面を獲得します。その画面には、古地図や船、鳥、鍵など象徴的なモチーフが浮かび上がり、物語性と静謐な時間感覚を湛えた空間が広がります。幾層にも重なる版と金箔の微妙な変化は、作品に独特の深みと存在感をもたらし、観る者に「時間の痕跡」を想起させます。
本展では、近年制作された作品を中心に、新作を含む約20点を紹介します。繊細な線描と豊かなマチエールによって形成される坪内の版画は、時間の堆積によって生まれる物の存在感を静かに提示します。物質と時間、記憶と物語が交差するその表現は、私たちが日常の中で見過ごしている時間の深層に目を向けさせるでしょう。
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