この度、PARCEL では、横山奈美による個展「Delivering Presence」を開催いたします。横山奈美の作品制作は、⻄洋由来の「油彩画」という形式に対する歴史的な距離感と、それに伴う「叶わぬ憧れ」や「劣等感」という情動的起点を、絵画という装置を通じていかに解体・再構築し得るかという問いに貫かれてきました。初期の「The First Object」シリーズにおいて、消費され廃棄されるトイレットペーパーの芯などを精緻な写実技法で描いた実践は、捨てられる運命にある物から機能的な意味を解放し、ただそこに存在するという佇まいへと転換することで、既存の価値体系を揺さぶりながら描くことの必然性を見つめ直す試みでもありました。
2016 年より展開される「Neon」シリーズでは、発光するガラス管の背後に隠された配電線やフレームを克明に描写することで、構造を支える「見えない存在」の可視化を試みました。これは、自己を被写体に投影する内省的な自画像としての性格を持ちながらも、光の背後にある物質的な緊張関係を暴き出す脱構築的なアプローチであったと言えます。しかし、相次ぐ社会の動乱や未曾有のパンデミックは、個人の内省に閉じた思考を揺さぶり、自律的な絵画のあり方に再考を迫りました。かつての自己探求は、世界との断絶を経験することで「他者といかに繋がるか」という切実な必然性へと転じ、その関心は自己の境界を越えて、他者の存在を分かち合うための開かれた表現へと向かいます。横山の作品は内省的な自己探求から「誰かがそこにいる」という確かな手応えを他者と分かち合うより開かれた表現へと変わり、近年の「Shape of Your Words」シリーズで探求してきた「他者の筆跡のトレース」は、作家自身の問いに友人が応じる新作「Shape of Your Response」へと進化しました。ここで言葉は、辞書的な意味を剥奪され、ネオンという「身体」を与えられることで、翻訳不可能な他者の痕跡へと変容します。
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